タイズプレゼンテーション

ローズ語り 史上最強助っ人のホンネ~今だから語れる"あの時"のこと

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日本語とチームメイト

2016.04.13 UPDATE

無事にキャンプをやり終えた僕たちは大阪に戻ってきた。この時、僕にとって大きな転機が訪れたんだ。

通訳の人が僕を含めた外国人選手3人に英語から日本語に変換する翻訳テキストブックを買ってくれたんだ。他の2人は気にする様子もなくすぐに本を放り出してしまったけど、僕は常に持ち歩き、暇があると目を通すようにしていたよ。もう日本で野球を続けるしかないという覚悟で海を渡ってきたからね。少しでも日本語をマスターしたかった。それとせっかく初めて外国生活をする機会を与えられたんだ。新しい文化を勉強する最高の機会を無駄にしたくなかったしね。

でも他の2人はとにかく通訳を頼り続けた。球場を離れたプライベートの買い物とかも含めて、とにかく用事があれば通訳に連絡していたよ。でも僕は野球以外では通訳の世話になりたくなかったんだ。僕は立派な大人だし、ベイビーシッターのように四六時中通訳の人たちについてもらう必要はないからね。

毎日テキストブックを読んでいるお陰で、徐々に日本の言葉を憶えていったよ。それに合わせるように、チームメイトも僕と会話してくれるようになり、そしてお互いを理解できるようになっていたんだ。

今振り返ってみると、これまで僕より体格の優れた外国人助っ人選手はたくさん存在したけど、自分ほど精神的にタフだった選手はあまりいなかったんじゃないかな。僕が日本で他の外国人選手たちよりも成功できたのは、まさにこのメンタルの部分だと思っているんだ。

アメリカで野球を続ける機会を失った僕に残された唯一の場所は日本だけだった。だからこそアメリカで得た野球に対する常識、知識をすべて捨て去り、日本人選手と同じ思考法で野球を捉えながら学ぶよう頑張ったつもりだ。その甲斐あって日本でこれだけの成績を残すことができたんじゃないかな。まさに自分の人生を変えてくれたね。

野球というスポーツは万国共通だ。同じバット、ボール、グローブを使う。でも自分にとって野球で最も重要なことはメンタルであり、自分の中の利己的な考え方を如何にして捨てることができるかどうかなんだと思う。