タイズプレゼンテーション

ローズ語り 史上最強助っ人のホンネ~今だから語れる"あの時"のこと

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再認識した日米の違い

2016.04.27 UPDATE

1996年に初めて日本にやって来た僕は、とにかく先入観を捨ててゼロの状態から日本の野球を学ぶつもりだった。でもキャンプでの猛練習もそうだったけど、毎日が驚きの連続だった。

実際に試合をするようになっても、日本とアメリカの違いは明らかだった。だからといってその違いに違和感を抱くのではなく、日本のスタイルを学ぶことだけを考えていたよ。

僕なりにその違いを説明させてもらうと、アメリカの野球がチェッカー(チェスボードの黒マスだけを使うゲーム)だとすれば、日本の野球はより複雑な、まさにチェスのようなものだと思う。そして毎試合がワールドシリーズの第7戦のような緊張感の中、とにかく選手たちが勝つことだけを目指してプレーしているんだ。

例えば1回から当たり前の様にバントをしてくるし、ノーアウト満塁でもバントの作戦をとってくる。またピッチャーも3-0、3-1、3-2と追い込まれた状況でも平気でフォークボールを投げてくる。アメリカの場合このような場面なら、リスクを避けて基本的には真っ直ぐを投げるのがセオリーだ。まさにアメリカと日本の野球は、戦い方からその取り組む姿勢までまったく異なったものなんだ。

その一方で、僕が感動したのは日本のファンが最高だということだ。これまでアメリカでは経験したことがないくらい素晴らしい応援をしてくれた。彼らの声援は常に僕を、何でも思い通りにプレーできる史上最強の選手になったような気分にさせてくれたよ。まさにアメリカで大学フットボール(アメリカでファンが最も熱い応援をする競技と言われている)でプレーしているような感覚とでも言えばいいかな。

今更言うまでもないけど、日本と日本の野球が野球選手として僕を成長させてくれたし、僕の人生そのものを変えてくれたんだ。言い方を変えれば、日本に来るまでの僕はただ野球をやっていたに過ぎなかったんだけど、日本に来て初めてしっかり野球に向き合い学ぶことによって、ようやくプロの野球選手になれたんだと思う。

ただ日本の野球は、多少やり過ぎな面もあるんじゃないかな。例えば打撃練習に関しては毎日きっちり20分間やる必要はないし、体調などを考えて時には10分とか15分にしてもいいし、また先発投手も試合中の球数をもう少し減らしてもいいんじゃないかな。

もちろん日本の野球を変えようなんて思っている訳じゃない。あくまで僕の個人的な意見だということを理解して欲しい。